「下意識」について
- 「意識」「下意識/前意識」「無意識」
みなさん、「下意識」あるいは「前意識」という言葉を聞いたことありますか?(このブログでは「下意識」(かいしき)で統一します。)
広辞苑によると、
”意識されていないが、思い出すことが可能な心の領域”
と定義されています。具体的に言いますと、例えば自転車の運転を思い浮かべてみてください。小さかったころ、補助輪なしの自転車を運転するのに皆さんたくさん練習を繰り返したと思います。でも、一度乗れるようになると、特段意識しなくても自転車を運転できると思います。とはいえ、無意識のうちに自転車を運転する人はいないですよね。このように一度体に覚えこませてしまったら、意識しなくてもそれができてしまう状態のことを「下意識」と言います。私は、この「下意識」こそがテニスの上達スピードを早めるキーだと思っていますので、今日はその「下意識」について書こうと思います。
あらかじめお断りしておきますが、今回はあまりITはあまり関係ない記事となっております。
- 寿司職人になるために長年の修行は必要か?
以前、実業家で有名なホリエモンこと堀江貴文さんがツイッターで”寿司職人が何年も修行するのはバカだ”とツイートして話題となりました。「飯炊き3年、握り8年」と言われる寿司職人の世界にあって、フォロワーからの”ご飯を炊く時の水分調節やシャリを握るのはそう簡単に会得できるものではない”との意見に対しては、”そんな事覚えんのに何年もかかる奴が馬鹿って事だよボケ”と回答しています。
もちろんこれには賛否両論あって、いろんな意見が飛び交いました。私の意見は、半分賛成で半分反論があります。こんなことを言うと身も蓋もないかもしれませんが、それぞれについて詳しく説明したいと思います。
まず賛成意見としては、長年にわたり裏方として世間を知らずにただひたすら努力するのは非効率だと思うからです。恐らく、寿司職人を目指して修行される方は年齢もある程度若く、いろんなことを吸収する時期だと思います。その大切な時期を厨房の中だけで過ごすのはあまりにももったいないと思うわけです。もし可能であるならば、独立して自分の店をもって、自分の料理を客に味わってもらい、うまい・まずいのフィードバックをもらい、また試行錯誤を繰り返しながら高みを目指す方がよっぽど有意義だと、私は考えます。
一方、反論意見としては、とはいえ修行をおろそかにしていいかというと、そういうわけではありません。上述の「飯炊き」に例えると、頂点を極めた職人さんは、その日の気温や湿度、あるいは米の状態によって水分量を調整すると聞きます。恐らくその極地に至るまでには果てしない努力があったと思います。3年という期間が妥当かどうかはわかりませんが、いろんな条件でいろんなパターンを試しながらああでもないこうでもないと、ただひたすら最高の状態に仕上げることを強烈に「意識」しながら努力をされていたのだと思います。
でも、一旦それが身につくと、朝起きてその日の天候や気温を肌で感じるだけで、あまり意識しなくても瞬時に最適な水分量がわかるようになるのだと思います。恐らく、そういった職人さんは、「今日は気温が〇度で、湿度が〇度だから水分量はこれくらいで。。。」なんていちいち意識はしていないと思います。これが「下意識」の状態だと考えます。
- テニスにおける「下意識」
翻ってテニスに話を戻すと、誰しも最初はフォアもバックもうまく打てなかったでしょうし、Sweet Spotでボールを捉えることもとても難しかったと思います。でも、コツをつかむとフォアもバックもボレーもスマッシュも意識しなくても打てるようになると思います。全国大会で上位に進出するような選手は、かなりの確率でSweet Spotでボールを捉えることができるでしょうし、フェデラーやナダルなどの世界のトップ選手は、もはやそんな当たり前のことは一切意識せずにプレーしても打点が狂うことなんてないでしょう。
そういった状態に至るまでには、ただ闇雲にがんばるだけではダメで、正しい打点でボールを捉えることを、常に「意識して」「意識して」「意識しまくって」練習を繰り返すことで「下意識」状態に達することができるのです。
テニスというスポーツは、自分が思った通りのスピードで、思った通りの回転量で、思った通りの場所にボールを打つことを前提として、そこから戦略を考えて、相手をコートから追い出してエースを奪うか、あるいは相手にミスをさせてポイントを積み重ねる必要があります。そうなるための「意識」を持った練習を繰り返し、いつしかそれが「下意識」に変わった瞬間が一番上達を実感するタイミングだと思います。
できれば近いうちに、私がこの「下意識」に達するために取り入れた練習法について、動画でご紹介したいと考えています。ご興味のある方は是非ご覧いただければと思います。
ちなみに、私はこの「下意識」という言葉は、学生時代にメンタルトレーナーでスポーツドクターでもある辻先生という方から教えていただきました。
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